欲しいのは原因と対策じゃないですか?
「すごい頑張って勉強してるのに、なんで全然できないのかな。。。」
「勉強はできるけど、学校はつまんないし・・・」
人それぞれ困りごとはありますよね。
それ、一人ひとりに違うアプローチが必要なんです!
IQが同じだと勉強のできも同じ?
IQ、知能指数ですね。
年齢と同じだとIQは100。年齢よりも知能指数が高ければIQは高くなります。
IQが出せる知能検査はいくつかありますが、今日は代表的なWISC-Vの話をします☆
WISC-Vでは課題を解いて5つの分野に分けて能力をはかります。
それぞれの課題の得点の合計から全検査IQ、いわゆるIQを算出します。
IQが同じくらいだと勉強のできは同じくらい?
いえいえ、そんなことはありません。
架空のお子さんたちですが、困りごとの事例をご紹介します。
なんだか意欲が低いお子さん
困りごとは?
学校の勉強はできる。小学生のうちはカラーの単元テストはだいたい100点。
ケアレスミスをするときもあるけれど、まあ取れてる。
でも、習い事も学校も意欲が低くて、手を挙げて発言はしない。
仲のいい子もいないみたい。
学校では言いたいことをがまんしちゃう。
そんなお子さんのIQをはかりました。
原因は?
IQが高い!じゃあ困りごとはどうして起こるの?
流動性推理が高いですね。先まわっていろいろ考えちゃうのかな?
流動性理解と言語理解に大きな差がありますね。
言葉が頭の回転に追いついていないから言えないのかな?
視空間認知、流動性推理が130ととても高いので、
学習内容や学校へ行くことに意味が見いだせないのかもしれません。
頭の良さは子供たちや周りの大人はどうやって判断するのでしょうか?
テスト結果ももちろんですが、しゃべり方、
授業での発言、板書を見てノートに写す作業の様子、いろんなものから判断しますよね。
この子の場合、判断されるものが平均くらいで、
本人も周りも知能指数の高さを見落としている可能性があります。
本人も「自分はIQが高い」と気づいていないんです。
けれど、視空間認知と流動性推理が高いので、
周りのお子さんと興味のあることが違うのかもしれません。
このお子さんは小学5年生。
実年齢は11歳ですが、視空間認知と流動性推理は130なので
11歳×1.30=14歳3か月相当の能力なんです。
対策は?
対策はずばり、
本人の特性理解とコミュニティづくりです!
このお子さんは学校での中休みや昼休みはずっと折り紙をしていて、
お母さんは「仲のいい友達がいない」ととても心配していらっしゃいました。
でも、いいんです。
この子は小学5年生。
お友達と恋の話をするのが好きな子たち、
アニメやドラマの話をする子たち、推しの話をする子たち、
動画の話をする子たち、いろんなお友達同士でのグループができてくる頃です。
流動性推理が高いので、周りの様子にあわせて
ニコニコしていることもできるでしょう。
期待される振る舞いもできるでしょう。
けれど、それだと辛いんですよね。
悪いのはあなたのせいじゃないよ、
こういう性質があるからだよ、と理解すること、
この性質の子は少ないから、
そういう悩みがあるのかもしれないと理解することが大切です。
学校外のコミュニティに同じようなことに興味のある子と
出会える場があるといいですね!
手前みそですが、水曜16時半からの算・国(公立中高一貫校の適性検査、ディベートなどをやってます!)
金曜のサイエンスクラス ハイレベルは
知的好奇心の高いお子さんもしっかり満足できる内容ですよー!!
すごい頑張ってるのに・・・
困りごとは?
別のお子さんの紹介です。
勉強をすごく頑張っています。
公文に通っていて、毎日1時間、公文のプリントを解いています。
チャレンジタッチもしているそうです。
それでも、学校の授業はわからない。
単元のカラーのテストは10点台。
辛いですよね。
原因は?
お子さんの知能検査をすると、境界知能のお子さんでした。
境界知能とはIQが低め、けれど知的障害ほどではない状態です。
ひとクラスに5人程度はいると考えられていますが、
ただ「怠けている子」「勉強ができない子」として勘違いされがちです。
この子の全検査IQは82でした。
4年生の男の子。
みんなが10歳の中、この子は8歳程度の知能で
追いつこうと頑張っていたんです。
この子の場合は、言語理解が100で
会話は問題なくできるので見落とされていました。
一番低いワーキングメモリは76です。
4年生の中で1年生~2年生くらいの能力で一緒に勉強していたんです。
板書をとるのも、先生の指示を聞くのも、いっぱいいっぱいだったと思います。
対策は?
まずは、おうちの方と本人が検査結果から特性を知りましょう。
その上で、独自の作戦を立てましょう。
「みんなと一緒」を求められるのは中学卒業までです。
学校で決められた順番で習得していく必要はまったくありません。
「大人になったときに自立して生活するには何を身に着ける?」の観点で
ゴールに向かって、ゴールに必要なものを優先して身に着けていきましょう。
また、自分の得意分野・認知特性と興味領域を活かして学んでいきましょう。
認知特性の話は細かくなってしまうので別記事でご紹介します💛
ど忘れと算数の苦手さ
困りごと
「もっとできるはずなんだけど、なんでかな・・・?」
この子は算数の文章題や図形の問題は解けます。
見直しをしたら計算問題も「あぁー」と気づけます。
ただ、解いているときは必死なんです。
2年生の時はくり下がりの筆算でつまずき、
今はわり算で苦戦しています。
他の科目はよくできます。
「なんで計算だけこんなにできないのかな?」
本人もおうちの人も、担任の先生も原因がわからなくて困っています。
原因は?
知能検査を受けると、IQ は平均でした。
先ほどの男の子とは違いますね。
全検査IQは平均ですが、一つだけ大きく差がある項目がありました。
ワーキングメモリです。
ワーキングメモリは短期記憶ともいわれます。
少しの間覚えておいて、その記憶を操作する能力です。
この子は、「少しの間覚えておいて操作をする」がとても苦手です。
3年生で習う「あまりのあるわり算」はこんな風に考えます。
17÷3を考えるプロセス
①3の段の九九で17に一番近いけど、17を超えない数を考える
②3×5=15だ!とわかる
③17ー15をしてあまりを考える
④17ー15=2だ!とわかる
⑤答えの欄に17÷3=5あまり2と書く
この考える途中で「何もとめてたっけ?」や
当初の目的を忘れて②のところで
17÷3=15
と書いて終わったりします。
この子はワーキングメモリが80です。
小学3年生なので9歳ですが、ワーキングメモリの能力は
9歳×0.8=7歳2カ月程度なんです。
小学1年生くらいのワーキングメモリで、頑張って計算しているんですね。
対策は?
この子は処理速度が速いです!
そうであれば、忘れる前に書けばいいんです。
先ほどの17÷3であればこんな工夫です。
本人と相談しながらメモのしかたを決めます。
メモを活用しながら考える・取り組むのも練習が必要なので、
モチベーションが上がるように励ましながら頑張りました。
低学年のうちから自分の特性を知っておくこと、
メモでワーキングメモリの弱さを補う方法に取り組んでおくと
中学、高校になったときの勉強のしかたや、
大人になったときのメモの取り方も変わってきます。
「そこまで筆算する?時間かかるから暗算でいいじゃん」とか
「そこまで書く?面倒じゃない?」と言われますが、
ワーキングメモリが低めな子で処理速度が速い子は
メモに頼ったほうが、うまく乗り越えられている子が多い印象です。
ワーキングメモリ低め&処理速度もそんなに・・・な子は別のアプローチがあるので、
また別の時に記事にします💛
バリバリ宣伝ですが、小2算数(満席で現在募集停止中です)、
小5算数では本人の特性にあわせた学び方を一緒に考え、取り組んでいます!
まとめ
ここまで見ていただいて、全検査IQも大事ですが、
内訳によって対応が違うことがわかっていただけたと思います。
よく、「ただ困っているだけなんですけど、それでも知能検査って受けていいんでしょうか?」と相談をいただきます。
もちろんです!
お子さんが困っていても「本人のやる気がないせい」とか
「親もバカだからなぁ」で終わらせて、
塾や通信教育でなんとかようとするご家庭が大半だと思います。
そんな中、お子さんの困りごとに寄り添って
「知能検査を受けてみよう」の思いにいたった保護者の方は素晴らしいと思います✨
発達障害の診断だけでなく、「困っているけど、これってなんで?」という
自分の個性を知るため、個性との付き合い方を知るための検査として
活用が広まるように頑張ります!